成人食物アレルギー
食物アレルギーとは?
食物アレルギーとは、ある特定の食べ物を食べたときに、体の免疫システムがその食べ物を「アレルゲン:抗原」とみなし、過剰に反応してしまう病気です。通常数分から2~4時間以内に、じんましん、腹痛、のどのかゆみ、呼吸困難など、さまざまな症状が現れます。ここでは主にIgE依存性の食物アレルギーについて解説していきます。
成人の食物アレルギーの特徴
食物アレルギーは、小児発症のみでなく、成人になってから発症するアレルギーもあります。こどものころに問題なかった食べ物でも、突然症状が出ることがあります。特に、成人では「食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)」や「口腔アレルギー症候群(OAS)」などのタイプも多くみられます。
また食物アレルギーの場合、通常は食物摂取後4時間以内に症状が出現することが一般的ですが、アニサキスアレルギー、納豆によるアレルギー(サーフィンなどをしていて、クラゲに刺さされると、納豆に対してアレルギーを起こすことがあります)、マダニ関連の肉アレルギー(マダニに刺されたことのある場合、特に哺乳類の肉に対してアレルギーを発症することがあります)は例外的に数時間~半日後から症状が出現します。
成人食物アレルギーの多くは経口感さ(腸管感さ)です。ある食べ物を何度も食べるうちに、特定の食べ物に対して、IgE抗体を作ってしまい(これを“感さ”といいます)、その状態で特定の食べ物を食べたときに症状が起こることが一般的です。
一方、腸間外感さ(食べること以外で感さ)もあります。例えば、花粉アレルギーがきっかけとなり、その花粉に似た構造を持つ果物や野菜に反応してしまう花粉―食物アレルギー症候群(PFAS)などがあります。下に主なPFASの原因花粉と、食べたときに症状を起こす食物の図表を示します。例えばハンノキ、シラカバに対する花粉症がある方がリンゴやモモ、大豆(豆乳)などを食べたときにのどや口がイガイガするなどです。
「©Thermo Fisher Scientific」出典
PFASは果物・野菜などを食べた後に、唇・口・喉などにイガイガ感やかゆみ・腫れなどを引き起こします。口周辺にアレルギー症状がでるためOAS(口腔アレルギー症候群)とも呼ばれています。症状を起こす果物に関連する花粉に対するアレルギーをまず調べます。
ラテックスアレルギー(ゴム手袋などの皮膚からの感さ)から始まる果物に対する食物アレルギーもあります(ラテックスーフルーツ症候群)。
主なアレルギーの種類と原因
各年代別に食物アレルギーの原因は異なります。18歳以上では、小麦19.7%、甲殻類15.8%、果実類12.6%、魚類9.8%、大豆6.6%、木の実類5.5%の頻度となっております。(アレルギー.2023:72より抜粋)
アレルギーの種類 | 発症の特徴 | よくある原因食品 |
---|---|---|
即時型アレルギー | 食後すぐに症状が出る | エビ、カニ、魚卵、ナッツ類、小麦、果物など |
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA) | 食後すぐに運動したときに症状が出る | 小麦、エビ、カニ、果物など |
口腔アレルギー症候群(OAS) | 食べた直後に口・のどのかゆみ | 生の果物(リンゴ、モモなど)、ナッツ、大豆など |
症状の現れ方と注意点
成人食物アレルギーの症状は多岐にわたります。様々な症状が組み合わさって出ることもあれば、そうでない場合もあります。
- 皮膚の症状:じんましん、かゆみ、赤み
- 消化器症状:腹痛、吐き気、下痢
- 呼吸器症状:咳、息苦しさ、ゼーゼーする
- 全身症状(アナフィラキシー):血圧低下、意識低下、呼吸困難など
特にアナフィラキシーは命に関わる緊急事態です。症状が出たらすぐに医療機関への受診をしてください。
当院ではアナフィラキシーの既往がある方にエピペンを処方することが可能です。
診断と検査方法
IgE機序による食物アレルギーの診断には、詳しい問診に加えて次のような検査が行われます。
検査方法 | 内容 | 特徴 |
---|---|---|
血液検査(特異的IgE) | アレルゲンに対する抗体の有無(感作)を確認 | 多くの食品に対応しています。まとめて数十個行うのではなく(擬陽性が多いため判断が難しい)、疑わしい食品に対してのみの、単項目での検査をお勧めします。 |
プリックtoプリックテスト | 食物と皮膚の反応を見る | 針(痛みの少ない)で食物を刺し、その針を皮膚に押し当て、即時型反応を確認します。15分程度で判定できます。血液検査でできない食品にも行う事ができます。 |
食物経口負荷試験 | 少しずつ原因食物を食べて反応を見る | 最も信頼性が高いが、当院では行なっておりません。また、大人への食物経口負荷試験は保険適応がありません。(小児の場合には保険が適応されます) |
※当院では小児、成人ともに食物経口負荷試験は行っておりません。必要と考えられた場合には、適切な医療機関に紹介させていただきます。
治療と予防のポイント
成人の食物アレルギーの治療の基本は「原因食物の除去」と「緊急時の備え」です。
主な対策
- 原因食物の除去:医師の診断に基づいて、必要な食物のみを除去します。ですが現在は、口腔アレルギー症候群で口の中がイガイガする程度である場合には徹底的な原因食物除去は行わなくても大丈夫とされております。
- エピペン®の携帯:アナフィラキシーの既往がある方は、携帯用のアドレナリン自己注射薬を常備しておいた方が安全です。必要な方には処方いたします。
- 生活指導:外食時には成分確認、調理法の注意なども大切です。ストレス、飲酒、生理時期、長風呂等は食物アレルギーが発症しやすい状況とされています。
- アレルギー表示の確認:加工食品のラベルをしっかり確認しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q.今まで食べていても突然アレルギーになることはありますか?
はい。成人発症の食物アレルギーは体調不良時(生理を含む)や、飲酒、運動後などに、今まで食べて大丈夫であった食物に対して突然症状がでることがあります。
Q.エピペンはどのような時に使いますか?
原因食物を摂取し、全身に皮膚症状が出現+呼吸困難、血圧低下、意識がもうろうとした時など、アナフィラキシーの兆候が見られた時に使用します。処方の際に、きちんと使い方の説明を行いますが、「迷ったら打つ、そして救急車を要請する」が原則です。
Q.治る可能性はありますか?
一部の食物アレルギーは治ることもありますが、多くは長期間の管理、つまりうまく付き合っていくことが必要になります。
院長より
成人の食物アレルギーは、生活の質に大きく影響します。しかし、正しい知識と対応を身につければ、安心して日常生活を送ることができると考えます。
当院では、成人食物アレルギーにたいして検査・診断から除去食の指導、エピペンの処方まで一貫して対応しています。気になる症状がある方や不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
さらなるアレルギーに関する情報が欲しい方は、みんなのアレルギー情報室をご参照ください。