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間質性肺炎

間質性肺炎とは

間質性肺炎(かんしつせいはいえん)は、肺の奥にある「肺胞(はいほう)」と呼ばれる空気の交換を行うごく小さな袋を取り囲む「間質(かんしつ)」という組織に炎症が起こる病気です。炎症が続くことで、肺の組織が少しずつ硬くなってしまい、線維化を起こし、呼吸がしにくくなるという特徴があります。

この病気は、長引く咳のような症状から始まり、徐々に息切れや呼吸困難が進行することもあります。進行が早いタイプとゆっくり進むタイプがあり、原因がはっきりしないものもあります。

間質性肺炎の主な症状

  • 長引くせき(頑固で痰が絡まない乾いたせきが多い)
  • 息切れ(階段や坂道で苦しくなる。周りの人と同じように歩けない)
  • 疲れやすさ(以前まで疲れなかったことで疲れてしまう)
  • ばち指という、太鼓のばちのように丸まった指先になることがあります。
  • 捻髪音(ねんぱつおん)(聴診すると、パリパリ、チリチリといった呼吸音の変化が確認されることもあります)

これらの症状は、年齢や他の病気と重なって見逃されやすいため、注意が必要です。

間質性肺炎の原因

間質性肺疾患の原因はさまざまですが、大きく分けると以下の3つに分類されます。

特発性(とくはつせい)間質性肺炎(IIPs)

原因がはっきりしないタイプで、特発性肺線維症(IPF)などが含まれます。中高年の男性に多く見られ、ゆっくり進行することが特徴です。COPD(慢性閉そく性肺疾患)と合併するとCPFEという病名になります。

薬剤性や職業性、住環境の影響   過敏性肺炎等

・頻度に差はありますが、抗がん剤や抗生物質、抗不整脈薬、漢方薬やサプリメントなど様々な薬剤が原因になることがあります。(薬剤性間質性肺炎)
・ほこりやカビ(農業や工業の職場で)、鳥のフンや羽毛などを長期間吸い込むことでも起こる場合があります。近くに牧場や養鶏場がある、ハトがよくベランダに留まっている、室内でインコやオウムなどを飼育している方で長引く咳や発熱症状がある方は注意が必要です。

膠原病(こうげんびょう)などに関連したもの 膠原病関連間質性肺炎

関節リウマチや全身性硬化症などの自己免疫疾患に伴って、肺にも炎症が広がることがあります。

このように、原因がわかるものもあれば、はっきりしない場合もあります。いずれにせよ、早めに診断し治療介入することが大切です。

間質性肺炎の検査

間質性肺炎を診断するには、いくつかの検査を組み合わせて行います。

検査名 内容 特徴・備考
胸部レントゲン 肺の影や線の異常を確認します。 まず行う基本検査です。肺の透過性が低下する(レントゲンで白くなる)ことが多いです。
胸部CT検査 肺の構造を詳しく画像にして、間質の変化や広がりを調べます。 間質性肺炎の診断、タイプ分類に非常に有用。院内で即日撮影可能です。
血液検査 線維化(KL-6,SP-D)や炎症、自己抗体、環境抗原 や、原因となる病気の可能性を調べます 病気のタイプや原因を検討します
呼吸機能検査 肺の働き(息を吸う・吐く力)を調べて、呼吸の状態をチェックします 症状の進行度合いを把握するために重要。肺活量%VCが低下することがあります。
気管支鏡検査(必要時) 細いカメラを気管支に入れて、肺の中を観察し、組織の一部を採取します 肺組織を詳しく調べる必要がある場合に行います。(行わずに治療することもあります。) 関連の基幹病院に紹介します。

このように、検査は段階を踏んで丁寧かつ迅速に行います。治療方針に関わってくるため、可能な限り正確な原因特定を目指します。CTで分類が困難な間質性肺炎は、気管支鏡検査での組織生検を行うことが理想的です。その場合、きちんと患者さんと相談しながら進めていきます。

間質性肺炎の治療

間質性肺炎の治療は、原因がわかっている場合にはまず原因への対応を行い、(薬剤の中止や変更、職場、住環境の見直し。膠原病の治療等)、以下の薬剤や在宅酸素を使用します。

おもな治療方法

抗炎症薬(ステロイド)

炎症を抑えるために使います。体重や重症度に合わせて量を調整します。副作用(免疫抑制、糖尿病、骨粗しょう症、白内障等)と効果の面から、近年では治療の第一選択から外れることも多くなってきましたが、原因によってはいまだ有効な治療と考えます。

免疫抑制剤

主に自己免疫疾患(膠原病)が原因の場合に用いられます。免疫を抑えるため副作用のチェックが重要です。

抗線維化薬

オフェブ、ピレスパなどの薬剤が使用できます。特発性肺線維症(IPF)、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)、全身性強皮症を伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)などに使用できます。肺が硬くなっていくの(線維化)を抑えるお薬です。呼吸機能の低下の進行を遅らせる効果が期待できます。高額な薬剤ですが、限度額申請や、難病の申請を行い、薬剤の費用面での負担を軽減していきます。

在宅酸素療法

酸素が足りなくなる場合、自宅でも酸素を補う治療を行います。必要に合わせて身体障がい者の申請を行い、経済的負担を軽減していきます。


原因や体質によって治療法は変わります。また確定診断に際しては当院のみでなく、関連病院での検査を必要とすることがある、呼吸器疾患の中でも難しい病気であるため、よく相談して一緒に治療方針を決めることが大切です。

間質性肺炎についてのよくある質問(Q and A)

Q. 間質性肺炎は治りますか?

A. 完全に元に戻すのは難しいことが多いですが、進行を遅らせたり、症状をやわらげたりすることは可能です。

Q. 間質性肺炎はうつりますか?

A. 感染症ではないため、人にうつることはありません

Q.何をきっかけに気づく人が多いですか?

A. 「乾いたせきが長引く」「階段で息が苦しい」などの軽い症状から始まることが多く、長引く風邪との違いに気づきにくいです。

Q.普通の肺炎とどう違うの?

A. 通常の肺炎はウイルスや細菌による急性の炎症で、発熱や痰を伴い、抗生物質で治ることが多いですが、間質性肺炎は慢性的で原因もさまざま、進行性のことが多いです

Q.気をつける生活習慣はありますか?

A. 禁煙は必須です。環境が原因なら職場や住環境を変える必要があります。通常の肺炎や風邪で悪化することがあるため、ワクチン等感染症対策も重要です。

院長より

間質性肺炎は、呼吸器疾患の中でも診断や治療が難しい病気の一つです。基本的にはゆっくりと進む病気ですが、数日単位で呼吸困難を来すこともある(急性増悪)病気です。特に「ずっと乾いた咳がとまらないな」「年のせいか皆とおなじようなスピードで歩けないな」「疲れてるだけかも」と見過ごしてしまいがちな症状から始まるため、早期の気づきと診断がとても大切です。もしかして、と思ったらぜひご相談ください。

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