慢性へいそく性肺疾患(COPD)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは
COPD(シー・オー・ピー・ディー)とは、「慢性閉塞性肺疾患」という病気のことで、主にタバコの煙などが原因で肺が傷つき、呼吸がしにくくなる病気です。ゆっくり進行していくため、最初は気づきにくいこともありますが、放っておくと日常生活にも支障をきたすようになります。
COPDは主に65歳以上に多くみられる病気ですが、喫煙歴のある中年の方にも発症することがあります。歩くだけで息切れがしたり、長く続く咳や痰(たん)が気になったりする方は、もしかしたらCOPDのサインかもしれません。
目次
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COPDの原因
COPDの一番大きな原因はタバコの煙です。長年にわたって喫煙を続けると、肺の中の細い空気の通り道(気管支)や、酸素を吸収し二酸化炭素を排出する部分(肺胞)が障害されてしまいます。
また、職場や家庭での受動喫煙(他人のたばこの煙を吸ってしまうこと)や、工場や車の排気ガス、ほこり、化学物質などの吸入も原因となることがあります。まれに、遺伝的な要因でCOPDになることもありますが、多くは生活環境や喫煙が引き金です。
2.COPDの検査
COPDかどうかを調べるには、喫煙歴等問診と身体所見、そして呼吸の検査が基本です。
よく行われる検査
検査名 |
検査内容 |
痛み |
特徴・備考 |
呼吸機能検査 |
マウスピースを介して機械に息を吹き込み、肺の空気の出入りの能力を測ります。 |
なし |
COPDの診断において基本となる検査です。早期発見にも役立ちます。 |
気道抵抗検査 |
空気が通る時の抵抗(気管、気管支の狭さ)を測る検査です。 |
なし |
気管支の状態をより詳しく評価できます。呼吸機能検査と併用されることが多いです。 |
レントゲン検査 |
胸部のレントゲン写真を撮影し、肺の形や異常影の有無を調べます。 |
なし |
肺気腫などの進行具合の確認に有効です。被ばく量はごくわずかです。 |
症状が進んでいるか、他の病気を合併していないかを調べるために、上記のような検査を組み合わせて診断を進めます。またCOPDは喘息と合併するとACO(エイコー)、間質性肺炎を合併するとCPFE(シー・ピー・エフ・イー)といわれます。また肺がんを合併する可能性が上がるため、CT等の検査を追加することもあります。低酸素があれば、血液ガス検査や24時間SpO2(酸素飽和度)モニター検査を追加し、在宅酸素療法(HOT) を検討します。
3. COPDの治療と在宅酸素療法
COPDの治療は、病気を完治させるというよりも、進行を遅らせ、症状を軽くして生活をしやすくすることが目的です。
① 禁煙
最も大事なのは「禁煙」です。どんなに良い薬を使っても、タバコを吸い続けていては効果が出ません。私たちのクリニックでは、禁煙治療のサポートも行っています。
② 薬物治療
吸入薬(すいこむ薬)を使って、気管支の拡張と気道分泌物のコントールを行い、空気の通りを良くします。毎日使うことで咳や息切れが改善されやすくなります。内服で去痰剤や、気管支拡張薬を併用し、肺炎のリスクを減少するためのワクチン接種も検討します。
③ 呼吸リハビリテーション
専門の指導を受けながら、呼吸の仕方や筋肉を鍛える訓練を行います。これにより、少しずつ息が楽になることがあります。
④ 在宅酸素療法(HOT)
病気が進んで酸素が足りなくなった場合には、自宅で酸素を吸いながら生活する「在宅酸素療法」があります。専用の機械を使いながら、ご自宅でも外出先でも使えるように工夫されています。
4. COPDについてのよくある質問(Q and A)
Q.COPDは治りますか? A. 残念ながら、完全に元通りにすることは難しい病気ですが、治療によって症状を和らげ、生活の質を保つことはできます。
Q.タバコをやめたら治る?
A. 進行を止めたり遅らせたりすることはできますが、壊れた肺の組織は元に戻りません。だからこそ、早めの禁煙がとても大切です。
Q.運動はしてもいい?
A. 無理のない範囲での運動はおすすめです。呼吸リハビリや軽いウォーキングなどを行うと、体力や呼吸の効率が良くなります。
Q.家で酸素を使うのは大変ですか?
A. 呼吸不全の方には在宅酸素療法が保険適応されます。初めは戸惑うかもしれませんが、慣れると安心して生活が送れます。酸素機器の業者さんが使い方や管理方法も丁寧に教えてくれます。
5. 院長より
COPDは「年のせい」や「ただの咳」と思って見過ごされがちですが、実は日常生活に大きな影響を与える病気です。また喘息や間質性肺炎を合併したりすることもあります。肺がんのリスクも上昇します。息が苦しい、咳が長引く、たんが切れない、すぐに疲れるといった症状がある方は、ぜひ一度ご相談ください。