花粉症・アレルギー性鼻炎について
アレルギー性鼻炎とは
アレルギー性鼻炎(びえん)は、花粉やダニ、ペットのふけなど、体にとって本来は害がないものに体の免疫が過剰に反応してしまい、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどが続く病気です。
日本では、およそ2人に1人がなんらかのアレルギーを持っているといわれ、そのうち多くがアレルギー性鼻炎に悩まされています。特にスギ花粉症は非常に多く、小学生から大人まで幅広い年代にみられます。
放置するとどうなるの?
アレルギー性鼻炎を放っておくと、
- 鼻づまりが続いてよく眠れない
- 集中力や学力が下がる
- 匂いがわかりにくくなる
- 中耳炎や副鼻腔炎(ちくのう症)になる
- 喘息やアトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患の悪化
など、日常生活にさまざまな影響が出ます。早めの対応が大切です。
アレルギー性鼻炎の原因と症状
アレルギー性鼻炎の原因(アレルゲン)は以下のようなものがあります。季節性の鼻炎と通年性の鼻炎があります。
「©Themo Fisher Scientific」出典
主な症状
- くしゃみが何回も出る
- 水のような鼻水が止まらない
- 鼻がつまって息がしにくい
- 目のかゆみや充血
- のどがイガイガすることも
これらの症状が風邪ではないのに毎年同じ季節に出る、または一年中ある場合は、アレルギー性鼻炎の可能性があります。
アレルギーの検査
症状の原因(アレルゲン)を正しく知るためには検査が大切です。主には採血と皮膚(スキン)プリックテストを行います。
採血
単項目検査(イムノキャップ)
最も一般的な検査です。採血(5~10ml)で疑わしいアレルゲン(抗原)を個別に選んで検査します。食物系アレルゲンも調べることができます。結果は数日間かかります。正確性が比較的高い検査ですが、採血を行うため、小児や注射が苦手な方には不向きかもしれません。
イムノキャップラピッドアレルゲン8
わずか0.1mlの指先などからの採血で20分ほどで結果がでます。気道アレルギーを起こしやすい代表的な吸入アレルゲン(抗原)8項目の測定が可能です。(スギ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ、シラカンバ属、ヤケヒョウダニ、イヌのふけ、ネコのふけ)。
「©Themo Fisher Scientific」出典
注射が苦手な方やお子さまにも向いている検査です。結果は-(陰性)/+(陽性)/++(強陽性)で出ます。
多項目同時測定検査(VIEW-39)
一度の採血で、吸入系アレルゲン、食物系アレルゲンなどを含む39項目を同時に検査することが可能です。結果が出るまでに数日間かかります。
「©Themo Fisher Scientific」出典
同時に様々なアレルゲンの検査が可能ですが、食物アレルギーに対してはやや正確性におとる心配があり、結果の解釈は慎重に行う必要があります。
皮膚(スキン)プリックテスト
陽性コントロール:(ヒスタミン)と陰性コントロール:(生理食塩水)、そして調べたい抗原(アレルゲン、ダニやスギなど)の試薬を前腕の内側に一滴づつたらし、痛みを感じづらい針で刺激し、20分後に、膨疹(ぼうしん:ふくらみ)の大きさで判定します。腕の長さにもよりますが、一度に複数のアレルゲンの検査が可能です。食物アレルギーの検査にも使われます。陽性コントロール(ヒスタミン)と陽性のアレルゲンはかゆみを伴いますが、自然におさまります。非常にわずかですが、アナフィラキシーの可能性があります。
アレルギー性鼻炎の治療
治療の目標は、つらい症状をやわらげて、快適に毎日を過ごせるようにすることです。
治療法 | 内容 | 効果 | 当院での対応 |
---|---|---|---|
抗ヒスタミン薬 | 内服薬、貼り薬。くしゃみ・鼻水を抑える | 即効性あり | 〇 |
点鼻薬(ステロイド) | 鼻の炎症をおさえるスプレー | 数日で効果 | 〇 |
舌下免疫療法(スギ、ダニ) | アレルゲンを毎日取り入れ、免疫がアレルゲンに反応しないようにする。 | 根本治療が期待できる | 〇 |
オマリズマブ(皮下注射) | 重症のスギアレルギーに使う注射薬。投与できる患者さんの条件あり。スギ飛散時期のみ投与可。 | 効果が強いが高額 | 〇 |
※患者さんの症状や重症度に応じて治療法を組み合わせて提案します。アレルギー性結膜炎の合併には抗ヒスタミン薬の点眼薬も処方します。
当院では行っていませんが、耳鼻科での外科的治療もあります。
- 下甲介レーザー治療:鼻粘膜をレーザーで焼き、鼻づまりを改善。1年程度で再発可能性
- 粘膜下下甲介切除術:鼻粘膜の一部を手術で切除し鼻腔容積の増大
- 後鼻神経切断術:アレルギー反応を伝える神経を切る手術。
※手術は症状が重く、薬が効かない方が対象となります。
よくあるご質問(Q&A)
Q. どの薬が一番いいのですか?
副作用(主に眠気)が出ないことに重きを置くのか、効果を優先させるのか。妊婦さん授乳婦さんやお子さんなのか。成人男性でも前立腺肥大症があるのかどうか。運転するかどうか。一日1回か2回か、内服か張り薬か、お薬の選択は様々です。患者さん一人一人と相談しながら最も適切と思われるものを重症度に基づき提案します。
Q. 舌下免疫療法はいつ始めるのがいいのか、2種類できるのか。
スギに対しての舌下免疫療法は花粉の時期(春)を避けて、夏〜秋ごろに始めるのが一般的です。スギとダニの舌下免疫療法を併用することもできますが、投与期間は1か月間は開けます。また現時点では3-4年は行った方がいいと言われております。受験などのシーズンに花粉で本来の力が発揮できないことを避けたい方、花粉の時期に大切なイベントを迎える方はぜひご相談ください。
院長より
アレルギー性鼻炎は「命にかかわる病気」ではないと思われがちですが、実は日常生活の質(QOL)に大きく影響する病気です。勉強や仕事に集中できなかったり、夜ぐっすり眠れなかったりするだけでなく、長引けば他の病気にもつながります。
当院では、一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせて、無理のない・続けやすい治療をご提案しています。必要があれば、耳鼻科や専門機関とも連携して治療を進めます。
「くしゃみくらい…」「春だけだから…」と思わず、ぜひお気軽にご相談ください。あなたの毎日がもっと快適になるよう、お手伝いします。
より詳しい情報を知りたい方は「みんなのアレルギー情報室」をご参照ください。